吉田山荘カフェ真古館と宗忠神社─歴史と自然に抱かれるひととき

吉田山荘 カフェ真古館にて
先日、吉田山に佇む「吉田山荘 カフェ真古館」を訪れました。ここは、かつて昭和天皇の義弟である東伏見宮家の別邸として建てられた建物を利用したカフェです。歴史を背負った空間が、今は静かに人を迎え入れる憩いの場となっています。
扉を開けると、木造の梁や天井の高さ、窓から差し込む光が、まるで時間の流れを少しゆるめてくれるようでした。外の木々の緑と、室内に射し込む柔らかな影が重なり合い、空間そのものが呼吸をしているかのように感じられます。
コーヒーとともに出された和菓子は、上品で優しい甘さ。添えられていた手書きの言葉には「いろはうた」がしたためられていました。「色は匂へど 散りぬるを──」で始まるこの歌は、人生のはかなさと循環を表し、同時に心を落ち着かせる叡智が込められています。建築美、光、自然、そして言葉。どれもがひとつに溶け合い、短い時間の中で深い安らぎをもたらしてくれました。







宗忠神社の静寂
カフェを後にして、すぐ隣にある宗忠神社へと足を延ばしました。宗忠神社は、江戸時代に活躍した黒住宗忠を祀る神社で、人々の暮らしと信仰を守り続けてきた場所です。長い石段を上る途中、木々の緑に囲まれ、鳥の声と風の音だけが響いていました。
境内に立つと、ふと空気が澄み、身体の奥にまでひんやりとした静けさが届くのを感じました。持参していた石をそっと手にすると、不思議と輝きを増したように見えました。自然のエネルギーに共鳴し、石自身も喜んでいるかのように思えたのです。ただの参拝ではなく、空間そのものに抱かれるような体験でした。




自然と空間がもたらす癒し
吉田山荘の歴史ある空間でいただいた一杯のコーヒーとお菓子。そして宗忠神社の清浄な空気。二つの場所で過ごしたひとときは、私にとって「人が自然や歴史に包まれて生きる」という当たり前のことを改めて思い出させてくれるものでした。
忙しさの中で見落としがちな、光や風や言葉。それらを意識して受け取るだけで、波動は整い、心は澄んでいきます。サクラガカオルもまた、訪れる方にとって、そのような時間と空間を提供できる場でありたいと願っています。